

産業廃棄物って何?

こんな質問にお答えしていきます。
この記事は、初めての方に向けた内容になっています。
- 産業廃棄物
- 産業物の種類
- 産業廃棄物の処理法
などを解説しています。
廃棄物の分類
廃棄物は一般的に「ゴミ」と呼ばれています。
廃棄物は、ゴミの種類やゴミの排出者(出す側)により、廃棄物の分類が異なります。
廃棄物の分類には以下の2つがあります。
- 産業廃棄物
- 一般廃棄物
産業廃棄物とは?
事業活動を行う上で出てくるゴミのうち廃棄物処理法により指定されている20種類を言います。
産業廃棄物には2種類あり、それが以下のものになります。
- 産業廃棄物
- 特別管理産業廃棄物
また事業によっては、産業廃棄物になるものと、一般廃棄物になるものがあります。
どちらかを判断する際に確認するのが産業廃棄物の区分です。
区分には3つあり、それが以下の通り。
- あらゆる事業活動に伴うもの
- 業種等が限定されるもの
- その他
あらゆる事業活動に伴うもの
全ての事業が対象になります。
業種等が限定されるもの
産業廃棄物のうち限定されている業種が対象。
限定されている業種
- 建設業
- 工業
- 製造業
- 畜産業 など
その他
上記2分類に該当しない産業廃棄物。

事業活動には営利以外に非営利も含まれます。
非営利の代表例は「学校」「医療関係」などがあります。
特別管理産業廃棄物
人体や環境にあたえる危険性が高いものを、特別管理産業廃棄物といいます。
通常の産業廃棄物よりも、管理体制や処理方法が厳しくなっているのが特徴です。
この為、特別管理産業廃棄物を排出する事業が限られています。
産業廃棄物まとめ
- 事業活動(営利・非営利とわず)で出たゴミのうち指定されている20種類
- 産業廃棄物のうち「業種等が限定されるもの」で限定されている業種から出るゴミは産業廃棄物、それ以外の業種から出るゴミは一般廃棄物
- 危険性が高い産業廃棄物は特別管理産業廃棄物
- 処分は、ゴミを出した事業者が行う
一般廃棄物とは?
上記、産業廃棄物以外の廃棄物を言います。
一般廃棄物には3種類あり、それが以下のものになります。
- 事業系一般廃棄物
- 家庭系一般廃棄物
- 特別管理一般廃棄物
事業系一般廃棄物
事業活動で出る産業廃棄物以外のもの。
業種等が限定されるものに含まれない業種から出た「紙くず」なども事業系一般廃棄物になります。
家庭系一般廃棄物物
一般家庭の日常生活に伴い出るもの。
特別管理一般廃棄物
一般廃棄物のうち、危険性が高いもの。
一般廃棄物まとめ
- 一般廃棄物は3種類にわけられる
- 事業活動出た産業廃棄物以外の廃棄物
- 日常生活で出る廃棄物
- 危険性が高い廃棄物
- 処分は、ゴミを出した人が市町村のルールに従って行う

以下より、廃棄物の早見表を載せています。

産業廃棄物の種類
法律で指定されている20種類の産業廃棄物は、以下のものになります。
あらゆる事業活動に伴うもの
- 燃えがら
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラス、コンクリート、陶磁器くず
- 鉱さい
- がれき類
- ばいじん
業種等が限定されるもの
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動物系固形不要物
- 動植物性残さ
- 動物のふん尿
- 動物の死体
- 汚泥のコンクリート固形化物(1~19の産業廃棄物を処理するために処理したもので1~19に該当しないもの)

ここで問題です!
飲食店から出た「紙くず」は産業廃棄物になりますか?

20種類の中に含まれているから”産業廃棄物”だと思う!

残念。答えは「×」です。
「排出する業種が限定されるもの」と記載されている部分については
限定されている業種以外の事業で出たゴミは「一般廃棄物」になります。

なるほど…。指定されている物だけで分別せず、しっかり確認する必要があるね。

そうです。産業廃棄物を排出する際、細かく指定されていますので注意が必要です。
詳しくは、こちらの関連記事「産業廃棄物の具体例!」をご覧ください。
特別管理産業廃棄物の種類
- 廃油(引火性排油)
- 廃酸(廃強酸)
- 廃アルカリ(廃強アルカリ)
- 感染性廃棄物
- 特定有害産業廃棄物
- 廃ポリ塩化ビフェニル(PCB)等
- ポリ塩化ビフェニル(PCB)汚染物
- ポリ塩化ビフェニル(PCB)処理物
- 指定下水汚泥
- 鉱さい
- 廃水銀等
- 廃石綿等(アスベスト)
- 廃油(廃溶剤)
- その他
産業廃棄物の処理方法は?
産業廃棄物を処理するには”廃棄物処理法”によって手順が定められています。
分別・保管
一般家庭でも「生ごみ」や「プラスチック」など種類によって分別を行い、市町村の指示に従って出されていますね。
それと同じように産業廃棄物も、廃棄物ごとに分別しなければいけません。
なかには分別に迷ってしまう「複数の素材を使用しているもの」「分けるのが困難なもの」などは”混合廃棄物”として別の扱いをするものもあります。
収集・運搬
保管場所から廃棄物を積み、処理場まで運ぶ作業を、収集・運搬といいます。
家庭ゴミでしたら指定されている場所(ゴミ置き場)に、廃棄物を置きますね。
その後、市町村の収集車が廃棄物を積んで、指定されている処理場へ運んでいきます。
産業廃棄物も、それと同じですが、行う人が「許可を受けた人」(事業者)と決まっています。
そして、その許可を受けるには、ゴミを積む(収集)都道府県とゴミを降ろす(運搬)都道府県から取る必要があります。
ちなみに、ゴミを積んで(収集)ゴミ降ろす(運搬)まで「奈良県」で終わる場合、奈良県の許可だけでOKです。
しかし、ゴミを積む(収集)場所が奈良県で、ゴミを降ろす(運搬)場所が滋賀県になる場合は、奈良県と滋賀県からの許可が必要になります。
運搬する際に通る都道府県の許可は必要ありません。


中間処理
収集で集めた廃棄物のうち8割が、中間処理場へ運ばれます。
中間処理場では、計量確認・検査・選別を行い、その後、切断・圧縮・解体・焼却といった廃棄物に沿って加工が行われます。
最終処分
内陸、または海に埋め立てをすることを最終処分といいます。
どちらを行うにしても、近隣の住民から許可や理解を得なければならない為、非常にハードルが高くなります。
産業廃棄物処理の流れ

産業廃棄物の処理費用
産業廃棄物は、排出した事業者が責任をもって処理しなければいけませんが、自社で行う場合と、外部に委託する場合を選べます。
自社で行う場合、自ら処理施設まで持ちこみます。
業者に委託する場合は、業者により費用が異なります。
負担する費用は、産業廃棄物の重さにより変わります。
最初からkg(またはt)でわかっている場合は、重さ×費用で計算できます。
産業廃棄物を入れる容器の大きさは分かるが、重さが分からない場合は、立方メートル(㎥)を用いて計算することが出来ます。
重さの出し方
産業廃棄物に対応した換算係数×立方メートル
上記で割り出した答えが、処理して貰う産業廃棄物の重さになります。

例で廃プラスチックを用いて行ってみます。
廃プラスチックの容積(3㎥)の場合
3(容積)×0.35(換算係数)=1.05
1立方メートルを重さにすると1,000リットルになる為、上記で出た数字に×1000を行います。
1.05×1,000=1.050
重さは1.050kgになります。
廃棄物の種類 | 換算係数 |
---|---|
燃えがら | 1.14 |
汚泥 | 1.10 |
廃油 | 0.90 |
廃酸 | 1.25 |
廃アルカリ | 1.13 |
廃プラスチック | 0.35 |
紙くず | 0.30 |
木くず | 0.55 |
繊維くず | 0.12 |
動植物性残さ | 1.00 |
ゴムくず | 0.52 |
金属くず | 1.13 |
ガラス・陶磁器くず・コンクリートくず | 1.00 |
がれき類 | 1.48 |
建設混合廃棄物 | 0.26 |
管理型混合廃棄物 | 0.26 |
安定型混合廃棄物 | 0.26 |
感染性廃棄物 | 0.30 |

ここで自社と業者との違いを以下の例を基とにあげてみましょう。
- 奈良県にあるA社が「紙くず」を300kg排出。
- 処理施設に支払う費用は、1立方メートルあたり30円
A社自ら処理施設まで運んだ場合
計算式 300㎏×30円=9,000円
A社が支払う費用は、9,000円。
業者に委託した場合
計算式:処理費用+運賃(業者に運んでもらう)=合計。
A社が支払う費用は、合計金額。
となる為、金額的には自社の方が安くなる可能性があります。
上記だけ見ると、自社でする方が安く感じられるかもしれません。
しかし、実際、自社で運ぶ場合、産業廃棄物に適応した車両や容器等を用意し、廃棄物の処理に適した施設を見つけるなど、手間がかかります。
また、運ぶ際も「処理基準や保管基準」に沿って行わなければいけません。
外部委託ならば「委託基準」のみになるため、自ら車両等の用意がありません。
※各基準については、後述する「事業者にかかる基準」で解説しています。
事業形態や、出る産業廃棄物の種類によって、自社か外部委託かを判断されるといいでしょう。
事業者にかかる基準
産業廃棄物を出す事業者は、産業廃棄物処理法により
- 処理基準
- 保管基準
- 委託基準
に従い条件を満たさなくてはなりません。
処理基準
産業廃棄物の処理基準は、大きくわけると「収集運搬」と「処分方法」に分別されます。
収集運搬基準
産業廃棄物を出した事業者自らが、産業廃棄物の収集・運搬を行う場合に義務付けられている基準を「収集運搬基準」といいます。
※外部委託する場合は不要です。
収集運搬基準の代表例
- 廃棄物の飛び散り、漏れを起こさない。
- 悪臭、騒音、振動の対策措置を行う。
- 車両の外側に「産業廃棄物収集運搬車」の表示を行う。
- 事業所名称、所在地、連絡先、運搬先の所在地、産業廃棄物の種類等を記した書類の持ち運び。
保管基準
産業廃棄物を出した事業者が、収集運搬を行うまでの間、一時的に保管する場合に義務付けられている基準を「保管基準」といいます。
※外部委託する場合は不要です。
保管基準の代表例
- 保管期間は、収集運搬を行うまでの間。
- 保管場所に、囲いを設置する。
- 保管場所の見やすい所に、必要事項を掲示する。
- 積み上げた産業廃棄物の高さが規定を超えない。
- ネズミやハエ、蚊等の害虫を発生させない。
- 廃棄物の飛び散り、流出、浸透による悪臭を発散させない。
委託基準
産業廃棄物を出した事業者が、収集運搬処理を外部委託する場合に義務付けられている基準を「委託基準」といいます。
委託基準の代表例
- 委託業者と書面での契約を交わす。
- 収集運搬と処分を、別々の業者に委託する場合、それぞれと契約書を交わす。
- 契約書は契約が終了しても5年間は保管しておく。
- 産業廃棄物管理票(マニフェスト)を委託する業者に交付し、その処理状況を確認、管理する。

先生、産業廃棄物管理票(マニフェスト)っていうのが出てきたけど、これって何?

産業廃棄物の契約内容通り、適正に処理されたかを確認するため、排出した事業者が交付する伝票になります。
産業廃棄物管理票には、以下の内容が記載されています。
- 産業廃棄物の種類
- 産業廃棄物の数量
- 運搬業者名
- 処分業者名
産業廃棄物管理票は、委託した産業廃棄物の処理が終わるまで廃棄物と一緒に移動します。
処分基準(中間処理・最終処分)
産業廃棄物を出した事業者が、自ら処分する場合に義務付けられている基準を「処分基準」といいます。
※外部委託する場合は不要です。
処分基準の代表例
- 中間処理時に廃棄物が飛び散ったり、漏れ出さないようにする。
- 中間処理時の悪臭、騒音、振動等に対して必要な措置を行う。
- 焼却時は、燃焼室ガス温度800℃以上で焼却する。
- 焼却処理には必要な空気量の確保を行い、通風設備も用意する。
- 焼却処理には燃焼室内温度を測る。
- 燃焼処理の燃焼室温度を保つため助燃装置を設置する。
- 焼却時に煙突先端から火炎、黒煙が出ないようにする。
- 焼却時に煙突から焼却灰、未燃物が飛び散らないようにする。
事業者にかかる基準の流れ
産業廃棄物の発生(事業者が処理を行う)
↓
保管基準(廃棄物を運び出すまでの間)
↓
処理基準
↓
事業者自ら行う場合”収集運搬基準”を満たす。
↓
↓
外部に委託する場合”委託基準”を満たす。
↓
処分基準(中間・最終処分)
↓
事業者自ら行う場合”処分基準”を満たす。
↓
外部に委託する場合”委託基準”を満たす。
