建築物の工事などに関わる方にとって、アスベストは身近な廃棄物の一つですね。
アスベストは「特管」(特別管理産業廃棄物)と「一般」(一般産業廃棄物)のどちらに分類されます。
分類方法が異なると、処分方法も異なってくる為、把握しておく必要があります。
また、2022年(令和4年)4月からは、アスベストの事前調査の結果報告が義務化されています。
調査や結果報告を怠ると、罰金や懲罰の対象になります。
こちらでは、アスベストの処分方法及び、事前調査の結果について紹介しています。
ライター紹介
奈良県奈良市に山之内行政書士事務所をかまえる代表行政書士の山之内清孝です。
平成25年に行政書士登録。
以後、建設業・産廃業・運送業の許認可関連業務を中心に行っています。
少しでもお役にたてるよう情報を発信していきます。
山之内清孝
アスベストとは?
天然の繊維性けい酸塩鉱物の総称で、日本では「石綿(いしわた)」や「石綿(せきめん)」と呼ばれています。
アスベストの特徴は、名前の通り“石の綿”であり、わずか0.1~1ミクロン(花粉以下の大きさ)という非常に小さな繊維で形成されています。
また「耐火性」「断熱性」「防音性」「電気絶縁性」にも優れており、その性質から様々な形状へと加工され、建築材料や電気製品、自動車、家庭用品など、幅広く使用されました。
しかし、アスベストによる健康被害(肺がんや悪性中皮腫)が、年々増加した為1971年を機に、アスベストによる法規制が行われます。
2006年以降から「原則アスベストの製造、輸入、使用の禁止」が義務づけられていますが、それまでは一部のアスベストの使用が認められていました。
古い建物などを解体した際に、アスベストが紛れている可能性が高い為、建築物の解体、改造、補修工事をされる場合、注意が必要です。
種類
アスベストには、以下の6種類があります。
- クリソタイル(白石綿)
- クロシドライト(青石綿)
- アモサイト(茶石綿)
- アンソフィライト石綿(直閃石綿)
- トレモライト石綿(透明閃石綿)
- アクチノライト石綿(陽起石綿)
このうち、日本で流通していたのが、クリソタイル・クロシドライ・アモサイトの3種類になり、なかでもクロシドライは健康被害が大きいのが特徴です。
この為、アスベストの処分及び管理方法について廃棄物処理法により定められています。
廃棄方法は?
アスベストを廃棄する際に「特別管理産業廃棄物」か「一般産業廃棄物」のどちらに分類されるかにより処分方法が異なります。
アスベスト
特別管理産業廃棄物
飛散性アスベスト(廃石綿等)
一般産業廃棄物
非飛散性アスベスト(石綿含有産業廃棄物)
建築物の解体、改造、補修工事等により除去された吹付アスベスト。
上記工事で使用したプラスチックシート、マスク、作業着等。
特定粉じん発生施設から生じたアスベスト。
廃石綿等のうち重量の0.1%を超えるアスベストを含むもの。
工作物の新築、改築または除去に伴って生ずる産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの。
特別管理産業廃棄物とは?
”廃石綿等”として分けられており、飛散性が高く健康被害が大きいもの。
吹付アスベストなどが、こちらに該当します。
具体例
建築物に吹き付けられたものから除去された石綿、石綿を含む建材、石綿が付着した作業着や道具など。
廃石綿等のうち重量が0.1%を超えるアスベストを含むもの。
処分方法は?
- 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可
- 特別管理産業廃棄物処分業許可
上記業者に委託する場合と、事業で許可を取り自社で行う場合のどちらかになります。
ただ、事業で許可を取る場合、特別管理産業廃棄物(通称、特管)となる為、一般産業廃棄物よりは取るのが難しいため業者委託されているところが多いです。
一般産業廃棄物とは?
”石綿含有産業廃棄物”として分けられており、非飛散性のアスベスト。
廃石綿等に該当しない廃棄物のうち、重量の0.1%を超えるアスベストを含むものになります。
具体例
スレート、pタイル、屋根用化粧スレートや外壁サイディングなど。
処分方法は?
- 産業廃棄物収集運搬業許可(がれき類、ガラス、コンクリート)
- 産業廃棄物処分業許可(がれき類、ガラス、コンクリート)
上記記載の種類を取り扱っている業者に委託するか、自社で許可を取り行うかになります。
自社で許可を取る場合、必ず「がれき類、ガラス、コンクリート」を選択するようにしましょう。
事前調査結果の報告が義務化!
アスベストは、人体に対する影響が大きいため、解体、改造、補修等の工事を行う際、事前調査するよう2020年から定められています。
今までは事前調査のみでしたが2022年(令和4年)4月1日~アスベストの事前調査結果の報告制度が始まっています。
調査報告を行わないと、補助金の申請が出来ないといったデメリットがある為、事業者さんは必ず報告しましょう。
事前調査結果の報告制度とは?
建築物等の解体、改修工事を行い事業者は、大気汚染防止法に基づき、該当工事における「石綿含有建材の有無」を事前調査の結果を都道府県と労働基準監督署の2つに報告する制度になります。
報告対象者は?
- 解体等工事の元請け業者
- 自主施工者
※個人宅のリフォームや解体工事なども含む。
報告対象工事は?
- 建築物の解体工事(解体作業対象の床面積の合計が80㎡以上)
- 建築物の改修工事(請負代金の合計金額が税込100万円以上)
- 工作物の解体・改修工事(請負代金の合計金額が税込100万円以上)
- 網製の船舶の解体または改修工事(総トン20トン以上)
※網製の船舶だけ「労働基準監督署」に報告し、都道府県への報告は不要です。
報告対象工事は上記に該当したものだけになりますが、アスベストの事前調査は全ての工事が対象です。
事前調査の方法は?
- 設計図などの書面による調査
- 現地における目視による調査
- 分析
- アスベストが使用されているとみなす
上記4種類になります。
このうち①と②の調査は必須です。
尚、事前調査を進めていく上で、吹付け材が見つかった場合は、分析による調査でアスベストの有無を確認する。
もしくはアスベストが含まれているものとみなし工事を行いましょう。
報告方法は?
電子システム(パソコン・タブレット・スマートフォン等による報告)で行います。
オンライン申請の為24時間行える上、1回の申請で大気汚染防止法所管局部(都道府県)と労働基準監督署の両方に行えます。
また、複数の現場がある場合も、まとめて行うことが出来ます。
※電子システムの利用が困難な場合、書面での報告も可能です。
その場合、大気汚染防止法所管部局、労働基準監督署の両方に提出が必要です。
報告を怠ると?
大気汚染防止法に基づき30万円の罰金。
アスベスト除去等の措置義務に違反ると3カ月以下の懲役または30万円以下の罰金。
令和5年から資格が必要です!
現状アスベストの事前調査は、無資格の方でも行うことが出来ます。
しかし2023年(令和5年)10月1日以降から着工される建築物の解体、改修工事に伴うアスベストの事前調査では「石綿含有建材調査者」の資格所持者のみとなります。
お持ちでない方で、必要な方は直ぐに取る必要があります。
石綿含有建材調査者の取り方については、2023年10月1日から資格必須!建築物石綿含有建材調査者になるには?でまとめています。
「アスベストの使用禁止(平成18年9月1日以降)に設置されたことの確認」については資格不要です。
※令和5年9月30日以前の解体、改修工事など、有資格者による調査が義務化されていない期間でも、アスベストの有無についての調査が必要です。
まとめ
アスベストの取り扱いは、ご自身のみならず、身近な方にも影響が及びます。
大切な方を守る為にも、事前調査及び、取り扱いは慎重に行いましょう。
またアスベストを産業廃棄物として事業で取り扱うご予定のある方。
当事務所でも、許可のお手伝いをしておりますので、お気軽にご相談ください。
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